北の街旭川:満開に咲いた桜はもう散った [北の街]
今年は春の気候のまま夏に入り「冷夏ではないか」と言う人が多かった。自然のままに生きている桜さえ、さぞや驚いただろう。平年より3日早い5月3日の「開花宣言」、そしてすぐの「満開」だった。テレビのニュースでは、50年の観測史上初めてと騒ぎ立てている。満開の桜の下にいると、無理やり咲かせられたという空気がただよっていた。
その桜も3日しかもたなかった。すぐに風に吹かれ散り、レンガ造りの歩道を彩っている。それも由か。旭が射していてもビルの陰に曇る歩道のほうが、散った桜の花びらは色濃く見えていた。昨年は桜が散るとすぐ“夏”のような気候だったが、今年は少し違って“春”の陽気をもう少し楽しめそうだ。
このごろの気候の変化にはなかなか馴染めないでいる。普通の生活のなかで、過去の経験、慣習、例えなどは、もう通用しない世界を迎えざるおう得なくなったのだろうか。それともこれこそが自然というものなのだろうか。作家の瀬戸内寂聴さんは、テレビ番組に出演したときや著書のなかで“世は無常”とよく言っているが、最近その言葉がやけに身にしみる。
当たり前だけれど、毎年花びらが散った後には素晴らしい青葉が桜の樹を彩る。その青葉を観にくる人も多く、心を和ませてくれているようだ。その時期にはもう一度この桜の樹の下で大きな深呼吸をしてみよう。早春の蕾から晩秋の落ち葉まで、桜という樹は実にありがたく癒しの空間を演出してくれている。
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