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「貸本屋」の衰退から感じるもの [コラム]

最近テレビを見ていても面白くなくなった。お笑いタレントが、棚卸後のバーゲンセールのように次から次と出てくる。何故、笑えるのか分らない所で、笑い声が聞こえてきて、白々しさを感じる。

笑いの強制なんか「真っ平ごめん」と、すぐにチャンネルを変えるが、そこでもまた似たような番組で、似たようなお笑いタレントが出ている。「歳のせいか、どうしようもないや…」と諦め、テレビを消してしまうことしばしばだ。

一週間のテレビ番組表を見ていて気づいたことがある。時代劇の番組が姿を消している。少し前までは、「鬼平犯科帳」「必殺仕掛け人」「暴れん坊将軍」「御家人斬九郎」など、シリーズで見ごたえのある番組が続いていた。
単発でも心に残っている作品もある。藤原竜也主演の「さぶ」は、青年が大人へ成長していくなかでの、友情と裏切りが交差するせつなさが伝わってきた。

まだテレビなどない頃(もう50年も前になる)、何をしていたかを思い出してみる。そういえば、同じ町内に「貸本屋」があった。一冊いくらという貸し出し賃料は思い出せないが、一遍に4~5冊は借りていた。それを母親と3人の姉それに末っ子の私が順番を待って読みあさっていた。2泊3日位だったろうか、読み終えるとすぐに返しに行った。

あの頃は、1週間もすると「貸本屋」には新作が並ぶので、それをわくわくしながら待っていた。借りた本の殆どは時代劇で「お家騒動もの」ばかりだったが、貧乏一家唯一の楽しみだったことを思い出す。

いまは「貸本屋」は姿を消し、チエーン化した古本屋の看板をよく見かける。よく覘いてみるが、棘とげしく耳に障る音楽が流れていて、読みたい本を集中して探す気力を削がれてしまう。5分もしないうちに店を後にしていることが多い。

最近、なにか殺伐としたものだけが伝わってくる。自分の心に落ち着きのないのが分る。テレビをあまり見なくなって、パソコンに移ってもそう変化はない。何か体の中に空洞ができてそれを埋めることができない。時代が危ない時期に差しかかっているのだろうか。小さな「貸本屋」の温もりが懐かしい。

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